「ストリーミングゲーム」という言葉がある。
ここ1、2年の中でコンシューマゲーム開発者が最も注目しなければならないキーワードの一つだ。
ストリーミングゲームの場合、ゲーム処理は全てネットワークを介した先のサーバー側で行われる。
全てだ。
その結果のみがゲーム画像としてユーザー側のモニタに表示される。
家のパソコンの性能がとても低くても、もしくはハイエンドな家庭用ゲーム機を持っていなくても、ネットワークにつながったモニターがあればいいのだ。処理は全てサーバー側にある。
家庭用ゲームビジネスから見たストリーミングゲームは脅威である。
なぜなら家庭用ゲームビジネスはハードウェアビジネスでもあるからだ。
ゲームを遊ぶ為のハコを買ってもらって、そのハコをプラットフォームとしたソフトウェアを売っている。
そして数年単位でハコの性能が古くなり新しいハコが開発され、またユーザーはそれを買ってくれる。
でも、ユーザーにとっては本来、ハードウェアなんて買いたくないのである。
従来、仕方なく買っていた部分も大きい。
初代プレイステーションではPS3のゲームは遊べない。性能が違いすぎる。
時代とともに進化する性能にあわせてハードウェアをアップグレードしなければならなかった。
しかしストリーミングゲームは違う。
それ(性能を司る機材)は手元に置く必要がない。
サーバー側が時代とともに処理能力を上げていけばいい。
ユーザーはそのことを意識する必要すらない。
アメリカでは既に、ストリーミングゲームビジネスが産声を上げている。
家庭用ゲームハードメーカーのお膝元である日本では聴こえない産声だ。
一部のテレビには標準でストリーミングゲームの仕組が内蔵されている。
もし、もしもだ。
もしテレビを買っただけでアサシンクリードが遊べたら、ミスタードリラーが遊べたら・・・。
誰がお金を出してまで数年後にゴミになるもの(ハード)を買うのだろう?
丁度今、ロサンゼルスでE3が開かれている。
家庭用ゲーム機の新作として任天堂がWiiUを発表した。
「今まで以上のイノベーションを感じる素晴らしいゲーム体験を提供する」と任天堂は発表した。
だが私にはこう聞こえた。
「既存のハードウェアビジネスを壊すつもりはない。6年後、またハードを買ってください」
家庭用ゲーム開発者の私は2つのことを願う。
1.6年後にまだ「ゲームのためにハードウェアを買う」という常識が残っているといいな。
2.ソニーやマイクロソフトの次世代機はゲームをクラウドの向こう側へ持って行ってくれるといいな。